CBT認知行動療法ってどんな治療?
ものの考え方や受け取り方(認知)が、気持ちや行動に影響することに注目し、お子さん自身が問題に対処する力を身につけていく心理療法です。「その人」を変えるのではなく、「考え方」に取り組みます。
仕組み:4つのつながり
出来事
たとえば、教室で友だちに声をかけたのに、返事がなかった。
自動思考
とっさに浮かぶ考え。「無視された」と思うか、「教室がうるさくて聞こえなかったのかも」と思うかで、その後が変わります。
気持ち
「無視された」と思えば、落ち込みや自己嫌悪が生まれます。
行動
「聞こえなかったのかも」と思えば、もう一度声をかけることができるかもしれません。
この4つが、どのように影響し合っているかに気づくことが、認知行動療法の中心的な目標です。
LICENSE「こころの運転免許」のイメージ
認知行動療法は、自動車教習所に似ています。治療の場で、「自分の考え方と気持ちの関係」を学び、気持ちを整える技術を身につけます。いわば、免許をとる段階です。
けれど、教習所を出ただけでは、運転がうまくなったとはいえません。実際の道路を走って経験を積むように、学んだことを、毎日の生活の中で試し、繰り返すことで、少しずつ上手になっていきます。
たとえば、「何をやっても失敗する」「いつも怒られる」といった考えが浮かんだとき、それを「挑戦」に変えていく練習をします。その過程で、自分を受け入れ、自分らしく生きるための新しい見方を見つけていきます。
FLOWどう進めるの?
- 回数と時間:一般的には、週1回、1回あたり50〜60分、全体で6〜20回を目安にします。病気や症状に合わせて調整します。
- 全体の流れ:はじめの1〜2回は「導入」、中ごろは「問題に取り組む期間」、最後の1〜2回は「終結」です。
- 1回の流れ:序盤は、先週の気分の確認と、宿題の振り返り。中盤は、その日のテーマに取り組みます。終盤は、まとめと、次の宿題を決めます。
- 宿題(ホームワーク):日常で試すことが大切なので、毎回、小さな宿題があります。
決まった流れで進める(構造化されている)ことは、時間が限られていても、治療の目的と方向をお子さんと共有できる、安心につながります。
FOR CHILDREN子どもの認知行動療法
子どもでも、考え・気持ち・行動のつながりを理解する点は同じです。そのうえで、お子さんの年齢や理解に合わせて、言葉や進め方を工夫します。
不安症
不安を感じる場面に、少しずつ慣れていく「曝露(ばくろ)」という方法を使います。怖い状況に向き合いながら、不安への対処の仕方を身につけます。
うつ病
否定的な考え方に気づき、それを変えていく方法を、いっしょに学びます。薬よりも先に考える、大切な治療のひとつです。
認知行動療法は、うつ病や不安症のほか、強迫症、PTSD、摂食障害など、さまざまな状態に有効だと示されています。また、日常のストレス対処や、人間関係の悩みにも役立ちます。
NOTES知っておいていただきたいこと
- 「カウンセリング」とは少し違います:認知行動療法は、決まった枠組みで、技術を学び、練習する治療です。話を聞いてもらうだけの面接とは、進め方が違います。
- 実施できる施設は限られています:専門の技術をもつ人が少なく、時間の面でも、実施が難しいことがあります。児童精神科の診療全体も、予約が取りにくい状況が続いています。
- 診察の中でも工夫しています:短い時間でも、お子さんの考え方や気持ちの整理を、治療の一部として行っています。
ご希望がある場合は、診察のときにお伝えください。お子さんの状態に合わせて、できる範囲で、いっしょに考えます。
このページは、宇佐美政英「児童精神科医が伝えたい子どものメンタルヘルス」(月刊薬事、2023年)の内容をもとに、保護者・一般の方向けにまとめ直したものです。診断や治療は、お子さん一人ひとりの状態に合わせて、医師が個別に判断します。