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児童思春期精神医療における多職種の活用を推進するための効果的な研修方法の開発

(令和5年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業 指定課題番号26)

第1章 本事業の概要

1、背景・目的

 世界保健機構によると、児童・青年の約 20%が精神障害・問題を抱えているため、児童・青年における精神障害予防の介入は有効であり、費用対効果が高いとされている。日本でも、発達障害や虐待児の増加が顕著であり、未成年の自殺や不登校を認める児童の数が増加している。
児童思春期精神医療は初診待機の長期化などの問題を抱えており、診療や支援を担う精神科医及び多職種の育成・活用が急務である。これらの現状を踏まえ、国のこころの健康づくり対策事業の一環として行われている思春期精神保健研修(厚生労働省こころの健康づくり対策事業思春期精神保健研修)について、近年の医学的知見や多職種連携における効果的な取り組みなどを整理し、より充実した内容に見直すことで、児童思春期精神保健分野の現場における質の高い診療の確保と多職種の活用を確保することが重要課題であ
る。
 思春期精神保健研修は、児童・思春期の精神科患者やその家族に対して診療や支援を提供する医療従事者に、必要な基礎的な知識や技術を提供することを目的とした研修である。本事業では、

  1. アンケート調査を通じて、各職種に共通する事項や職種ごとに必要な事項、さらには連携に関する事項を把握し、評価することで、各職種の知識や技術、研修場所、職種間の連携などの実態を明らかにすること
  2. この結果をもとに、児童思春期精神医療の診療や相談支援に係る多職種の医療従事者に対する、児童思春期精神医療の知識や技術等についての、効果的な研修の手法を明確にした多職種向けの児童思春期精神医療研修カリキュラム及びシラバス(以下、多職種向け研修カリキュラム)を策定すること

の2つを目的とした。この多職種向け研修カリキュラムの策定によって、現場における多職種の活用を基盤として、質の高い児童思春期精神医療を提供することが期待される

2、事業計画内容

1)児童思春期精神医療研修に関する実態調査
  1. 目的
     本調査は、児童思春期精神医療現場における多職種の業務や連携の状況、研修に係る先行研究 等についての実態把握を目的としている。また、収集した情報は、これまで実施されてきた「こころの健康づくり対策事業思春期精神保健研修」の研修内容の改訂を目的にその内容を検討する。具体的には、精 神疾患を抱えた児童思春期の患者・家族等に対し、診療や支援を提供するに当たって必要な基礎的知識や技術等について、各職種に共通する事項、各職種に必要な事項、連携に関する事項に整理する。
  2.  方法
    ・対象
    ①国立国際医療研究センター国府台病院がオンラインにて実施した令和 3 年度から令和 5 年度厚生労働省こころの健康づくり対策事業思春期精神保健研修に参加した専門職、②日本児童青年精神医学会員、全国児童青年精神科医療施設協議会参加施設職員の医師・看護師・公認心理師、精神保健福祉士などを対象とする。ただし、学会などの関係機関はその理事会等での承認が得られた場合にのみ実施する。
    ・方法
    各職種を対象として精神疾患を有する児童思春期の患者等に対し、学ぶべき治療や支援を提供するに当たって必要な基礎的知識や技術等についてオンラインアンケートを行う。
    委員会を通じて調査内容について検討し、オンライン調査フォームを作成する。調査フォームの完成と同時に国立国際医療研究センターの倫理委員会に調査内容について申請し、その承認を得る。倫理委員会承認後にアンケート調査を実施する。
2)多職種による児童思春期精神医療研修・プレローンチ
  1. 目的
    本事業を通じて作成した多職種向け研修カリキュラムの運用についてプレテストを実施し、その問題点を抽出する。抽出された課題を最終的な多職種向け研修カリキュラムに反映することを目的とする。

  2. 対象
    対象として、日本児童青年精神科医療施設協議会もしくは日本児童青年精神科・診療所連絡協議会に所属し、入職 3 年目以下のスタッフを募集する。各職種 3-10 名程度(医師、公認心理師、精 神保健福祉士、看護師、作業療法士など)として、合計 50 名を予定した。

  3. 方法
    オンデマンド形式によるオンライン研修を実施する。
    共通項目:令和 5 年度こころの健康づくり対策事業思春期精神保健研修の研修動画のうち、委員会にて共通項目として選択した講義と調査結果を利用する。ただし、演者の同意を得て利用する、利用できない場合には委員会にて新たな動画を作成する。
    職種別項目:医師向け、心理向け、ソーシャルワーカー、看護向けの4つの職種別講義を委員会にて企画し、リアルタイムのオンライン・ウエビナーにて実施をする。職種別の講義内容について は、委員会にて決定する。該当する職種ではない場合には、共通項目のみとする。
    実践的項目:多職種連携を実施している児童思春期精神科医療施設にて実践的研修を企画する。
    共通項目・職種別項目について、理解度チェックテストを実施し、その結果を集計する。

3)多職種による児童思春期精神医療研修カリキュラムとシラバスの作成
  1. 目的
    本事業を通じて多職種向け研修カリキュラムを作成する。この研修カリキュラム及びシラバスには、児童思春期精神医療に関する基礎的な知識や技術、診療や支援に必要な技術、各職種の連携に関する内容等が含まれる。また、研修の実施方法や評価方法についても明確に取りまとめ、効果的な研修の実施 を可能にする。このように、多職種向けの児童思春期精神医療の研修カリキュラム及びシラバスの作成に より、現場における質の高い診療の確保と多職種の活用を図り、児童思春期の精神疾患を抱えた子どもたちやその家族の支援を強化することを目指す。
  2. 方法
    研修カリキュラム検討委員会:
     多職種向け研修カリキュラムの案を作成する。この過程で、主任研究者が行なっている厚生労働科学研究費「児童・思春期精神医療における多職種連携の推進のための研究」(23GC1013)で作成されている「児童・思春期精神医療における多職種連携マニュアル」との整合性を確認するため、研究班との検討も行う。

    多職種向けの児童思春期精神医療研修カリキュラム
     多職種向け研修カリキュラムについては、研修目的に基づいて、各職種が習得すべき学習内容、教材、研修方法、評価基準などを体系的に組み立てたものとする。また、多職種向け研修カリキュラムに は、①研修者が習得すべき知識やスキル、②学習の手順、③研修者が習得した知識及び技術の評価方法、などを明確に示すことで、研修者が効果的かつ効率的な学習ができるように設計する。研修者が得るべき・習得すべき知識やスキルの内容とその時期を、職種別に明確にすることも検討する。
     この検討事項を踏まえて、厚生労働省こころの健康づくり対策事業思春期精神保健研修の内容の中からいくつかを抜粋して、全職種共通項目及び各職種別単位として設置する。児童思春期精神医療の知識・技術の向上と社会資源に合わせた多職種連携の推進は生涯にわたって継続していくことが求められるため、研修終了後のフォローアップ研修もカリキュラムの中に組み入れることも検討事項である。

    多職種向けの児童思春期精神医療研修シラバス:
     共通項目と職種別項目に分かれて作成する。研修者は自身の習得レベルや職種に応じて適切なカリキュラムを選択し、多職種による児童思春期精神医療の実践に効果的に取り組むことができる。より多くの人たちが容易に研修を受けることができるように、可能な限り知識の習得はオンライン化を検討する。
    共通項目:すべての職種に共通する児童精神医学的知識と技術、心理的・福祉的評価およびその支援に関する知識と技術が含まれる。
    ・職種別項目:各職種が児童精神科医療において実践的な知識と技術を習得するための内容が規定され、それぞれの職種において取得すべき期間や経験年数が明示される。
    ・実践的項目:多職種連携を促進するために、研修カリキュラムの中にも多職種間での情報共有や連携を学ぶ実践的な研修機会を検討する。各職種が互いの役割や責任を理解し、効果的な連携を図ることができるよう、実践的な研修内容も検討する。

3、実施体制

1)研修カリキュラム検討委員会の設置

児童思春期精神医療を専門とする医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師を含む有識者による検討委員会を設置した。検討委員会の委員、オブザーバー、事務局を図表 1図表 2図表 3、にそれぞれ示す。委員の選定に関しては、これまでに児童思春期精神医療に関する研修を主催した経験を有する者、大学等で人材育成に関与している者、現在児童思春期精神医療に携わる看護師・心理職・精神保健福祉士を含む多職種による委員会を設置した。

2)企画検討委員会の開催

検討委員会は 5 月から 3 月にかけて全 4 回オンラインで開催し、Web 上でのシラバスの作成に関するオンライン検討委員会を実施した(図表 4)。

 

第2章 実施結果の概要

1、児童思春期精神医療研修に関する実態調査

 令和 3 年度から令和 5 年度厚生労働省こころの健康づくり対策事業思春期精神保健研修に参加した専門職 1240 名を対象とした。回答数は、調査の拒否 1 名を含む 428 名であった。最も多い参加者は公認心理師・臨床心理士、ついで看護師、保健師、精神保健福祉士・社会福祉士、精神科医であった(図表  5)。回答者と同じ職種の初心者が受けるべき研修の評価を 10 段階評価(1-10 点)で回答を得て、「Net Promoter Score(NPS)」((推奨者数(9,10 点)-批判者数(1-6 点))/(回答者総数)x100)で測定した。その結果を図表 6図表 7図表 8図表 9 に記載する。NPS が0 以上は良い、20 以上が好ましい、50 を超えると優秀、80 を超えるとトップレベルの推奨とされる。
 令和 3 年度から令和 5 年度までの厚生労働省こころの健康づくり対策事業思春期精神保健研修に追加で必要となる講義として、トラウマ関連障害(PTSD, 複雑性 PTSD)や愛着障害、依存症、睡眠障害、学校関連の問題、性同一性障害、児童福祉関係、遊戯療法などであった。研修方法については、オンデマンドによる研修と、多職種での症例を通じた理解度の向上が高い結果であった。
 図表 10 にすべての講義を NPS の特典の高いものから順に示す。NPS が0 以上は良い、20 以上が好ましい、50 を超えると優秀、80 を超えるとトップレベルの推奨とされ、電気けいれん療法がマイナス 42 であること、遊戯療法と児童精神科看護の NPS が 20 以下であった。しかしながら、児童精神科病棟の看護については、同じ看護職だけでみてみると NPS が 60 を超えており、高い要望があることも明らかとなった。
 また、回答時点で、多職種があつまって定期的に行う会議を 68%が実施していることがわかり、75%が多職種連携に困難を感じていることも分かった。これらの結果から、職種によって児童精神科医療の実践に必要と考える講義内容にばらつきがあることがわかり、すべての職種に共通した研修カリキュラムを作製する必要があると考えた。

「Net Promoter Score(NPS)」(推奨者数(9,10 点)ー批判者数(1ー6 点))/(回答者総数)x100)で測定し、NPS が 0 以上は良い、20 以上が好ましい、50 を超えると優秀、80 を超えるとトップレベルの推奨とされる。

2、多職種による児童思春期精神医療研修

1)対象者

 日本児童青年精神科医療施設協議会または日本児童青年精神科・診療所連絡協議会に所属し、入職3 年目以下のスタッフ。 各職種 3~10 名程度(医師、公認心理師、精神保健福祉士、看護師、作業療法士など)とした。

2)開催日時

【総論編、オンデマンド研修】 令和 5 年 9 月 25 日(月)~11 月 19 日(日)
【各論編、オンデマンド研修】 令和 5 年 9 月 25 日(月)~11 月 19 日(日)
【多職種編、対面研修】 令和 6 年 1 月 17 日(水)10:00~16:00
【症例検討、対面研修】 令和 6 年 1 月 18 日(木)10:00~16:00

3)開催場所

対面研修:国立国際医療研究センター国府台病院

4)定員と参加者

定員 50 名、参加者 54 名。

5)講義内容
  1. 【総論編、オンデマンド研修】 各 50 分
    ・厚生労働省における児童精神科医療に関する施策(20 分)
    ・子どもの診察とその評価
    ・子どもの精神療法と不登校・ひきこもり
    ・自傷・自殺への対応
    ・睡眠衛生指導と睡眠障害
    ・薬物療法
    ・入院治療について
    ・子どもの集団療法について
    ・逆境体験がこどもの発達に及ぼす影響と回復への支援
    ・家族療法の理論と実際
  2. 【各論編、オンデマンド研修】 各 50 分
    ・注意欠如・多動症
    ・自閉スペクトラム症(ASD)
    ・統合失調症
    ・不安障害/気分障害
    ・インターネット依存・ゲーム障害
    ・強迫症
    ・虐待の評価とケア
    ・摂食障害
    ・身体症状症
  3. 【多職種編、対面研修】 各 50分
    ・専門病棟での児童精神科看護の業務ー行動制限最小化を目指してー
    ・国府台病院での公認心理師の取り組み
    ・国府台病院での精神保健福祉士の取り組み
    ・専門病棟での児童精神科保育士の業務ー多職種との連携ー
    ・子ども病院における児童精神科 OT の業務ー多職種連携を中心にー
  4. 【症例検討、グループディスカッション】 2症例 1症例150分
    ・グループディスカッションの目的
    ・多職種によるグループディスカッション研修では、実際の症例に基づいた詳細な事例研究を取り入れ、参加者が理論を実践に活かす方法を学べるように、グループディスカッションでは、実際の症例分析を通じて、多職種チームでのアプローチと介入戦略を設計し実践することを目指した。
    ・グループディスカッションの構造
    ・各グループに医師、公認心理師・臨床心理士、精神保健福祉士、看護師が最低1名参加し、加えて作業療法士、保育士らが参加し、1グループ6人までとした。
    ・グループ内での役割として、司会、書記、発表者を明確に決め、役割を分担することが効果的である。ディスカッション中は、全員が意見を述べる機会を持てるように意識することを明確にした。
    ・1症例について2~3回のディスカッションと発表の時間を設け、以下の点について症例を通じて各グループで議論し発表した(図表11)
  5. グループ ディスカッションの内容
     以下の内容について、仮想の多職種チームとしてのグループ内で以下の内容について症例を通じて議論し、臨床力の向上を目指す。
    アセスメント・診断:多職種チームでの症状形成理解に向けた生物学的、心理的、社会的視点からの’見立て’と 多職種チームによる診断へのアプローチとその結果の共有。
    治療・支援方針:各職種からの情報を統合し、治療および支援方針を検討。各職種から見た改善
    点の議論。
    全体の振り返り:議論された内容をもとに、今後の多職種で介入できる点について多職種チームが反省と提案を行う。
    スーパーバイザー:各グループの発言を積極的に取り扱い、多職種での介入に視点が向くように助言する。
6)研修を通じた習熟度

 オンライン・オンデマンド研修については 19 講義と対面 5 講義に関してのプレ・ポストテストは正答率が69.1%から 82.3%に上昇を認めた(図表 12)。

7)望ましい研修方法について

研修方法については、多職種での症例を通じた理解度の向上オンデマンドによる研修、臨床実習、対面研修が望ましい結果であった(図表 13)。

3、多職種による児童思春期精神医療研修カリキュラムとシラバスの作成

1)児童思春期精神医療における多職種実践研修のカリキュラム

 児童思春期精神医療における多職種実践研修のカリキュラムは、児童思春期精神医療に従事する多職種医療従事者に対して、児童精神科医療の基礎知識を深めると共に、特定の精神疾患に関する専門知識の習得を目指す。また、多職種連携を通じて、実践力の強化を図ることを目的とする。
 対象者は、児童思春期精神医療に関わる医師、看護師、公認心理師・臨床心理士、精神保健福祉士、保育士、作業療法士などであり、彼らに対し、総論編、各論編、多職種連携編、グループディスカッションを含む広範な学習機会を提供する。
 カリキュラムは、理論から実践に至るまでの一連のプロセスを包含し、参加者が児童思春期精神医療の質を向上させるために必要な知識とスキルを習得できるように構成されている。
 研修方法には、オンライン・オンデマンド研修、対面研修、ハイブリッド形式が取り入れられ、多様な学習スタイルに対応している。
 評価方法としては、各セッション終了後の理解度テスト、グループディスカッションへの参加、症例の発表などが含まれ、参加者の学習成果を測定する。

2)児童思春期精神医療における多職種実践研修のシラバス
  1. シラバスの内容
     シラバスには、講義スライド、文献資料、ケーススタディ、症例報告など、各セッションで使用される教材と学習リソースが明記されている。これらの教材は、参加者が研修の内容を深く理解し、実践的なスキルの獲得を支援する。
  2. 総論編
     児童思春期精神医療の全般的な理解を深めることを目的とし、厚生労働省の施策、診察・評価方法、精神療法など、幅広いトピックをカバーする。このセクションでは、不登校や自傷行為、睡眠衛生、薬物療法、外来・入院治療、地域連携、集団療法、家族療法に関する最新の知識と実践的なアプローチを学ぶ。各講義の講義時間は 50 分である。
  3. 各論編
     注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症、統合失調症など、特定の精神疾患に焦点を当て、それぞれの疾患に関する詳細な知識、診断方法、治療戦略を理解する。各講義の講義時間は 50分である。
  4. 多職種連携編
     異なる専門職種間の効果的な連携と協力の促進を目的とする。医師、看護師、公認心理師・臨床 心理士、精神保健福祉士・社会福祉士、保育士、作業療法士など、各職種の役割と、児童思春期精神医療における連携の重要性が強調されたプログラムである実際の症例を用いたグループディスカッションを通じて、多職種間の連携と協働を実践し、参加者が実際の医療現場で直面する可能性のある複雑な症例への対応を学ぶことを目的とする。このセッションでは、異なる専門職種からの視点を統合し、患者の評価、診断、治療計画の策定に至るまでのプロセスを共有し、議論する。グループディスカッションは通常、研修プログラムの後半に位置づけられ、参加者が学んだ理論と技術を実践的な症例に適用する機会を提供する。各ディスカッションセッションは、特定の症例に焦点を当て、参加者間の積極的な交流とフィードバックを促進するように設計されている。
3)研修の成果を評価するための具体的な方法

 シラバスは、研修の成果を評価するための具体的な方法も規定している。これには、各講義終了後の理 解度テスト、グループディスカッションへの積極的な参加、症例発表とその評価が含まれる。評価は、参加者が研修目標をどの程度達成しているかを測定し、個々の学習過程を反映し、今後の自己学習に向けた指針を提供する。このシラバスは、参加者が児童思春期精神医療における多職種実践研修を通じて、専門的な 知識を習得し、多職種連携の中で実践的なスキルを高めるための包括的な知識と経験を提供する。

4)研修の需要と研修提供体制の構築

 これまでに示すように厚生労働省こころの健康づくり事業思春期精神保健対策研修を平成 22 年より実施してきており、以下の参加者を認め、極めて高いニードを認めている(図表 14)。本事業での検討を通じて、これまでの医療従事者研修と応用コースの2コースから、総論・各論・多職種編およびグループディスカッションへの変更することが望ましいことを「児童思春期精神医療における多職種実践研修マニュアル」と「児童思春期精神医療における多職種実践研修シラバス」に示した(図表 15)
 これらを通じて、児童思春期精神医療に従事する多職種は、児童思春期の患者に対するより質の高いケアと支援を提供できるようになることを目指している。今後の研修提供体制として研修者の登録、研修後のフォローアップ体制の管理、多職種のスーパーバイザーへの講師によるグループディスカッションの各地域での開催を目指したい(図表 16、図表 17)