ASD自閉スペクトラム症ってどんな特性?
人との関わり方や、こだわり方に特徴のある、発達の特性です。「ASDという診断名」だけでなく、そのお子さん自身を理解することを、私たちは大切にしています。
2つの大きな特徴
コミュニケーションと人との関わり
相手の気持ちをつかむのが苦手。言葉やしぐさのやり取りが、うまく噛み合わないことがあります。
こだわりと繰り返し
決まった手順や予定への強い固執。特定の物事への強い興味。感覚の過敏さが見られることもあります。
「スペクトラム」とは「連続体」という意味です。以前は「自閉症」「アスペルガー障害」などと分けて呼ばれていましたが、2013年の診断基準の改訂で、ひとつの連続した特性としてまとめられました。
「こだわりが強い」「空気が読めない」といった印象だけで、ASDと決めつけることはできません。診断には明確な基準があり、専門の医師が慎重に判断します。
VIDEO動画で見る
自閉スペクトラム症について、動画でも解説しています。
薬物療法については、次の動画も参考にしてください。
DIAGNOSIS気づきと診断
- 気づくきっかけ:1歳半や3歳の健診で言葉の遅れを指摘されて気づく場合と、園や小学校の集団生活で、集団行動やコミュニケーションの難しさから気づく場合があります。
- 幼いほど診断は慎重に:お子さんは成長とともに大きく変わります。小さいうちは、ご自身の困りごとを言葉で説明することもできません。経験を積んだ医師でも、診断の確定には慎重になります。
- 診断される子が増えています:診断基準が広まったことなどが指摘されていますが、理由はまだはっきりしていません。診断名は、時代や基準によっても変わることがあります。
- 女の子は見過ごされやすい:「自閉症は男の子の特性」という思い込みもあり、女の子では気づかれにくく、診断が遅れる傾向があります。
- ほかの特性と重なります:ADHDや知的な発達の遅れが重なっていることも多く、あわせて評価します。
発達障害を診られる専門の医療機関は不足しており、初診まで数か月かかることもあります。診断を待つ間にも、園・学校・地域の療育センターなどでできる支援があります。
ADOLESCENCE思春期に起こりやすい混乱
思春期は、同年代の集団の中で自分を確かめ、親から自立していく時期です。ASDのお子さんは、この集団という高い壁の前で戸惑い、他意がなくても周りに距離を置かれて、孤立しやすくなります。
- 表面に出る困りごと:不登校、ゲームへののめり込み、昼夜逆転などが目立つようになることがあります。
- 重なって出てくる心の不調:不安、気分の落ち込み、強迫症状、摂食障害、ひきこもりなど。反対に、反抗や暴力、盗みなど、外に向かう行動として出ることもあります。
- 背景を見落とさないこと:目立つ症状への対応だけで終わらず、ASDやADHDの特性があるのではと考えて、背景を見直します。
この時期にいちばん大切なのは、お子さんの考えを、まず最後まで聞くことです。行動の背景には、そのお子さんなりの理解や理由があります。そこに耳を傾けることなしに、関係はつくれません。
SUPPORT支援と治療の考え方
現在のところ、ASDを完治させる治療はありません。目指すのは、特性を理解したうえで、お子さんに合った環境をつくり、症状を軽くして暮らしやすさを高めることです。
環境を整える
見通しがもてる予定、わかりやすい指示、落ち着ける場所など、その子に合った環境を、家庭・学校・地域で整えます。
療育・トレーニング
ソーシャルスキルトレーニング、絵や写真を使ったコミュニケーションの補助、TEACCHなどの療育、認知行動療法があります。
薬を使う場合
ASDの中心的な症状を治す薬はありません。ADHDや強迫症が重なる場合の薬、強いいらだちや興奮を和らげる薬を、必要に応じて検討します。
薬は、お子さんの状態を評価し、利点と注意点を説明したうえで、ご家族の同意のもとで使います。
CAUTIONサプリメントや特別な治療について
「少しでも良くなるなら」と、さまざまな方法が気になるのは自然なことです。ここでは、よく質問を受ける方法について、現時点でわかっていることを整理します。
| 方法 | 現時点でわかっていること |
|---|---|
| キレート療法(体内の重金属を除く) | 効果を示す確かな根拠はありません。血液中のカルシウムの異常や腎臓の障害、死亡などの重い副作用も報告されており、危険のほうが大きいと考えられます。 |
| ワクチン | ワクチンがASDの原因になることを示す根拠は見つかっていません。複数の大きな研究で関連は否定されています。 |
| グルテン・カゼインの除去食 | ASDの症状を改善する効果は示されていません。むしろ、お腹の調子を悪くする可能性が指摘されています。 |
| オメガ3脂肪酸などのサプリメント | ASDの症状を改善するとは、現時点では言えません。 |
| 反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS) | 大人のうつ病には保険が使えますが、18歳未満での安全性は確認されていません。ASDへの有効性も、まだ研究の段階です。 |
もしこうした方法を使っている、あるいは使いたいと考えている場合は、飲み合わせや体への影響もあるため、診察の際に医師・薬剤師に教えてください。保険診療として広く使われているかどうかも、判断の目安になります。
FOR FAMILIES保護者の方へ
お子さんの特性を受け止めるまでには、時間がかかります。数年かかることも珍しくありません。「親なのにわかっていない」と責められる場ではなく、気持ちをいっしょに整理しながら、お子さんの特性と困りごとの関係を、何度でも丁寧にお伝えします。
支援は、小学校への就学、中学や高校への進学など、制度の切り替わりで途切れやすくなります。かかりつけ医、療育センター、教育委員会、児童相談所などに情報が分かれてしまわないよう、地域で切れ目なくお子さんを支える仕組みが大切です。気になることは、いつでもご相談ください。
このページは、宇佐美政英「児童精神科医が伝えたい子どものメンタルヘルス」(月刊薬事、2020〜2022年)の内容をもとに、保護者・一般の方向けにまとめ直したものです。診断や治療は、お子さん一人ひとりの状態に合わせて、医師が個別に判断します。