ADHDADHDってどんな特性?
「忘れ物が多い」「じっとしていられない」「順番が待てない」。そんな姿の背景には、生まれつきの脳の働きの特性があることがあります。叱る前に知っておきたいことをまとめました。
3つの特徴
ADHD(注意欠如・多動症)は、次の3つの特徴を中心とする発達障害のひとつです。家だけ、学校だけではなく、場所を選ばずに現れるのが特徴です。
不注意
忘れ物やなくし物が多い。話を最後まで聞けない。順序立てて取りかかるのが苦手。
多動性
じっと座っていられない。手足が動いてしまう。いつも体が動いている。
衝動性
順番を待てない。思いついたらすぐ行動する。人の話に割り込んでしまう。
このような様子は、どのお子さんにも多少はあります。「困りごとが年齢に比べて強く、幼いころから続き、生活や学校で支障が出ている」ときに、ADHDの可能性を考えます。
DIAGNOSIS診断はどのように行うのですか
- 検査だけでは決まりません:血液検査や画像検査でADHDを診断することはできません。診断基準に照らして、行動の特徴から総合的に判断します。
- いろいろな場面の情報を集めます:お子さんは、場所や相手によって違う顔を見せます。ご家庭の話だけでなく、学校の先生や学童などからの情報も、確かな診断のために大切です。
- 診察室での様子も手がかりです:座っていられるか、質問を最後まで聞けるかなど、その場の様子も参考にします。
- ほかの原因を見分けます:落ち着きのなさが、虐待やつらい体験の影響、うつ病によるいらだち、睡眠不足、自閉スペクトラム症の併存、甲状腺の病気や貧血などから起きていることもあります。丁寧に確かめたうえで診断します。
ADHDと自閉スペクトラム症は、重なって見られることもあります。
GROWING UP成長とともにどうなりますか
症状は学童期に目立ちやすく、成長とともに軽くなっていくことが多いとされています。一方で、一部は形を変えながら続くこともあります。大人になってから初めて「ADHDのよう」に見える場合は、不安や強迫など、別の心の不調が背景にあることも少なくありません。
たしかに困りごとはありますが、多くのお子さんは自分の特性を受け止めながら、社会の中で生活しています。人なつっこく、明るく、愛嬌のあるお子さんも多いのです。
SUPPORT治療の基本は「理解と環境づくり」です
ADHDの支援では、薬よりも先に、次のような関わりを大切にします。
まず理解する
本人にも、年齢に合った言葉でADHDの特性を伝えます。同時に、お子さんの良いところや得意なことも必ず伝えます。
声かけとほめ方
叱られ続けると、「どうせ怒られる」「また失敗する」と自信を失ってしまいます。できたことを具体的にほめ、記録に残すと励みになります。
ペアレント・トレーニング
保護者が、子どもへの関わり方の具体的な技術を学ぶプログラムです。同じ悩みをもつ保護者と出会える場にもなります。
環境を整える
机の上や部屋を片づけて、目に入る刺激を減らします。気が散る場面、集中しやすい場面をいっしょに探します。
学校との連携
先生にも特性を理解してもらい、学校での環境調整を進めます。先生からほめられる経験は、お子さんの大きな自信になります。
得意を伸ばす
「忘れっぽいけれど、これだけはできる」という自信を、学童期に見つけて育てていきます。
MEDICINE薬を使うときの考え方
薬は、心理社会的な支援をしっかり行ったうえで、それでも日常生活や学校生活に大きな支障が続くときに検討します。利点と注意点を説明し、ご本人とご家族の同意を得て始めます。始める前に、2〜3か月ほどかけて症状を評価することが目安です。
現在使える4つの薬
| 種類 | 一般名(商品名) | 効果の続く時間 |
|---|---|---|
| 中枢神経刺激薬 | メチルフェニデート徐放錠(コンサータ) | 約12時間 |
| 中枢神経刺激薬 | リスデキサンフェタミン(ビバンセ) | 約12時間 |
| 非中枢神経刺激薬 | アトモキセチン(ストラテラ) | 約24時間 |
| 非中枢神経刺激薬 | グアンファシン(インチュニブ) | 約24時間 |
効果の続く時間や、適応となる年齢は、薬ごとに異なります。最新の情報は、診察の際に医師・薬剤師にご確認ください。
薬を選ぶときに考えること
- 困りごとが出る時間帯:朝の支度、学校、放課後、夜など、どの時間帯に困っているかを整理します。薬は効果の続く時間が違うため、生活に合わせて選びます。
- 眠りへの影響:中枢神経刺激薬は、寝つきにくさが出ることがあります。もともと眠りが浅いお子さんや、飲み始めてから眠りが悪くなった場合は、早めにご相談ください。
- 薬の管理:お子さんの薬は、保護者の方が管理します。適切に管理されないと、乱用につながるおそれがあるためです。
中枢神経刺激薬の「厳しい決まり」について
中枢神経刺激薬は、不適切な処方や乱用を防ぐために、国が厳しく流通を管理しています。処方できる医師や薬局は登録制で、患者さん一人ひとりにIDと患者カードが発行されます。同じ方が複数の医療機関から重ねて処方を受けることはできません。手続きが増えますが、お子さんを守るための仕組みです。
なお、児童期から医師の管理のもとで適切に治療を受けることは、その後の薬物やニコチンの問題を増やさず、むしろ減らす可能性があると報告されています。ただし、薬の利点と注意点を、医師と相談しながら決めていくことが大切です。
SLEEP睡眠との関係
睡眠不足は、それだけで不注意や落ち着きのなさ、衝動性に似た行動を引き起こします。「ADHDのせい」と思っていた困りごとが、実は眠りの問題だった、ということも少なくありません。お子さんの睡眠リズムも、あわせて見直すことが大切です。