SLEEP子どもの睡眠と、こころ
睡眠不足は、イライラや落ち着きのなさ、集中力の低下など、さまざまな困りごとの出発点になります。薬の前に、まず生活リズムを整えることを大切にしています。
睡眠不足で起こりやすいこと
イライラ・落ち着きのなさ
子どもは、眠気をうまく自覚できず、イライラ、多動、衝動的な行動として表れることがあります。
集中力・意欲の低下
注意が続かない、疲れやすい、成長や食欲に影響が出ることもあります。
ADHDと間違われることも
寝不足による集中力の低下を、ADHDの症状と見間違えてしまうことがあります。睡眠を整えてから、改めて評価することが大切です。
FACTS日本の子どもたちの睡眠
日本の子どもたちは、世界的にみても睡眠時間が短いことが知られています。小学校高学年ごろから、平日と休日の睡眠時間の差が開き、その差が大きい子ほど、つらい体験に関連した症状が強いという調査もあります。
| 年齢の目安 | 望ましい睡眠時間 |
|---|---|
| 幼児 | 10〜14時間 |
| 学童期 | 9〜11時間 |
| 青年期(中学・高校生) | 8〜10時間 |
必要な睡眠時間には個人差があります。昼間の眠気で困っていないかが、目安になります。学校で起きていられないほどの眠気があるときは、要注意です。
TIPS今日からできる、睡眠のコツ
朝、光を浴びる
起きたら、カーテンを開けて朝の光を浴びます。体内時計がリセットされ、夜の眠りの準備が整います。
起きる時刻をそろえる
休日に2〜3時間遅く起きると、体内時計が遅れ、月曜の朝がつらくなります。起床時刻をできるだけそろえましょう。
朝ごはんと運動
朝食は目覚めを促し、昼間の適度な運動は寝つきをよくします。就寝直前の激しい運動や夜食は控えます。
寝る前の画面は控える
子どもは明るい光に反応して、目が覚めやすくなります。ゲーム機、スマホ、PC、テレビは、寝る前は控えましょう。
カフェインに注意
エナジードリンクなどのカフェインは、睡眠や気分に悪い影響を与えることが知られています。夕方以降は避けましょう。
寝る前のリラックス
軽い読書や音楽、ぬるめの入浴など、お子さんに合う方法で気持ちを落ち着かせます。
- 眠くなってから寝床へ:早く寝ようと無理をすると、かえって寝つきが悪くなります。寝床で長く過ごしすぎると、眠りが浅くなります。
- 「寝だめ」はできません:睡眠は、ためられません。足りない睡眠は、「負債」として積み上がります。
- 家族みんなで:睡眠の習慣は、家族全体で身につけると、続けやすくなります。
CAFFEINEエナジードリンクと、カフェイン
エナジードリンクや、コーラ、コーヒーに含まれるカフェインは、眠りの大きな妨げになります。とくに、エナジードリンクは、どこでも手に入り、子どもでも簡単に買えます。
- カフェインは、神経を興奮させます:とりすぎると、落ち着かない、ドキドキする、不安になる、眠れない、頭やおなかが痛くなる、などが起こることがあります。
- 量の目安:海外の機関は、子どもと青少年で、体重1kgあたり、1日に2.5〜3mg以下を目安としています(体重40kgで、およそ100〜120mg)。エナジードリンク1本には、商品によって、およそ36〜150mgのカフェインが含まれます。1本でも、目安を超えることがあります。
- ほかの飲みものにも、含まれます:コーラやコーヒー、お茶などにも、カフェインがあります。エナジードリンクだけを悪者にせず、全体の量を見ましょう。
- 年齢の制限は、ありません:日本では、清涼飲料水として売られ、年齢の制限がありません。海外には、子どもへの販売を制限する国もあります。大人が、飲みすぎないように、声をかけてあげることが大切です。
「エナジードリンクで、ADHDになる」って、本当?
海外の調査で、エナジードリンクを多く飲む中学生は、落ち着きのなさや不注意の傾向が強い、と報告されました。けれど、これは、質問票での傾向を調べたもので、ADHDと診断されたわけではありません。また、「エナジードリンクを飲んだから、そうなった」のか、「もともと、そうした傾向がある子が、たくさん飲んだ」のかは、わかっていません。
ただ、どちらであっても、カフェインのとりすぎは、睡眠不足を通じて、不注意や落ち着きのなさを悪くすることがあります。お子さんが、よく飲んでいる場合は、量や時間帯を、いっしょに見直してみましょう。
CHECKこんな様子があるときは、ご相談ください
- 激しいいびき:子どもでも、睡眠中の激しいいびきは、呼吸の通り道がせまくなっているサイン(睡眠時無呼吸症候群)かもしれません。扁桃腺の肥大や肥満などを調べます。
- 寝つけず、起きられない(体内時計のずれ):特に思春期に多くなります。通常の夜更かしとは、見分けが必要です。
- 足のむずむず:寝るときの足の不快感で眠れず、昼間の落ち着きのなさにつながることがあります(むずむず脚症候群)。
- 十分に寝ているのに、昼間の強い眠気がある:ナルコレプシーなど、眠気の病気が隠れていることがあります。
- 気分が重く、楽しめない状態が続く:睡眠の問題の背景に、うつ病などが隠れていることがあります。
睡眠の問題は、うつ病、不安、ADHDなどの早期のサインとなることもあります。ひとりで抱え込まず、かかりつけの小児科や、児童精神科にご相談ください。
MEDICINE睡眠薬について
子どもの睡眠の問題では、すぐに薬を使うのではなく、生活習慣と睡眠のリズムの見直しを、まず行います。「寝る前の決まりごと」を毎日同じ順番で行う、親が添い寝しなければ眠れない状態を少しずつ減らす、といった行動面の工夫も有効です。
そのうえで必要なときには、医師が慎重に薬を検討します。ただし、国内で、子どもに対して有効性と安全性が確かめられた薬は限られています。
- 従来型の睡眠薬:子どもでは、眠いのに落ち着かず興奮するなど、思わぬ反応が出ることがあり、慎重に使います。長く漫然とは使いません。
- メラトニン:体内時計に働く薬で、子どもの神経発達症にともなう不眠に保険が使えます。
- そのほか:眠りと覚醒に関わる物質に働く新しい種類の薬もあります。
薬は、必ず医師の指示どおりに使ってください。自己判断で飲む量や回数を変えないでください。
このページは、宇佐美政英「児童精神科医が伝えたい子どものメンタルヘルス」(月刊薬事、2021〜2023年)の内容をもとに、保護者・一般の方向けにまとめ直したものです。診断や治療は、お子さん一人ひとりの状態に合わせて、医師が個別に判断します。