SCHOOL REFUSAL不登校・ひきこもりと思春期のこころ
「不登校」は、学校に行かない・行けないという「状態」を表す言葉で、病名ではありません。背景はお子さんによって違います。まず、その子のこころの中で何が起きているのかを、いっしょに理解することから始めます。
考えられる背景
友人関係
いじめを含む友だちとの問題は、大きな要因のひとつです。集団から外れる怖さもあります。
学業・挫折
勉強のつまずきや、小さな失敗でも、強い挫折感と恥ずかしさにつながることがあります。
家庭の状況
家庭に心配なことがあると、「自分がいないと家族が壊れるのでは」と、家にとどまろうとすることもあります。
心の病気や特性
不安、強迫、自閉スペクトラム症、ADHD、うつ病などが背景にあることもあります。
思春期のこころ
はっきりした理由がなくても、新しい自分と、学校という競争の場とのあいだで違和感を抱くことがあります。
ADOLESCENCEなぜ思春期に起こりやすいのでしょうか
思春期は、親を中心にした世界から飛び出し、仲間の中で刺激を受けながら、自分の価値観を作っていく時期です。親から離れたい気持ちと、まだ守ってほしい気持ちが同時にあり、揺れ動きます。
- 等身大の自分を受け入れる苦しさ:「何でもできる」という子ども時代の感覚を手放し、自分の強みも弱みも受け入れていく過程には、無力感や恥ずかしさがともないます。
- 仲間から外れる恐れ:同年代の集団から脱落する怖さから、集団に過剰に合わせようとして、疲れてしまうことがあります。
- 一度ひきこもると抜け出しにくい:学校に行けていない罪悪感から、周りの大人の言葉を「責められている」と受け取りやすくなります。大人との関係は、近づきたい気持ちと離れたい気持ちが入り混じり、不安定になります。
お子さんの多くは、「学校に行ったほうがいい」と自分でも思っています。けれど、「もう、みんなについていけないかも」「何か言われたらどうしよう」という不安で、一歩が踏み出せずにいます。
THE ROOM家にいる間、お子さんは何を感じているのでしょう
自室でゲームや動画に没頭している姿は、大人から見ると「遊んでいる」ように見えるかもしれません。けれど、いまの子どもたちにとって、ゲームやインターネットは、友だちとつながる大切な場でもあります。傷つくことを恐れずに、友だちと触れ合える手段になっていることもあります。
そのうえで、頭の中では「このままではいけない」「将来が大変になる」と、不安や罪悪感を抱えて、悶々とした日々を過ごしていることも少なくありません。大人の価値観だけで評価せず、お子さんの世界を知ろうとすることが、理解の第一歩です。
SUPPORT支援のポイント
背景を見立てる
不安・強迫・発達の特性・うつ病などの有無を確かめ、あれば、その治療を支援に組み込みます。診断名だけでなく、ひきこもる前の暮らしや、本人の気持ちを想像しながら、見立てを作ります。
家族の関係を見直す
過保護や過干渉で、親子が離れにくくなると、不登校が長引くことがあります。家族が「社会への橋渡し」の役目を取り戻せるよう、いっしょに考えます。
再チャレンジを支える
無理に戻すのではなく、本人のペースで次の一歩を選べるように、場をいっしょに探します。
支援は段階的に進みます
- 家族への支援:まず保護者の方の不安や疲れを受け止め、関わり方をいっしょに考えます。
- お子さん個人への支援:面接や訪問などで、本人の気持ちに寄り添います。
- 居場所や小さな集団との再会:安心して過ごせる場所や、少人数の集団を試します。
- 社会参加への試行:学校、通信制や定時制の高校、サポート校など、進路の選択肢を探します。
いまは、昼夜の定時制や三部制の定時制、チャレンジスクール、通信制高校とサポート校など、さまざまな形の学びの場があります。不登校だった自分から一歩踏み出す場所として、お子さんに合うものをいっしょに探します。
FOR FAMILIES保護者の方へ
わが子が突然、学校に行けなくなったとき、驚き、不安になるのは当然です。「これからどうするの」と詰め寄ってしまったり、ご自身の子育てを責めたりしてしまう方も多いと思います。誰にとっても、初めての子育てで、初めての出来事です。
思春期のお子さんの課題は、私たち大人の課題でもあります。お子さんの不安・孤独・独立への思いを受け止め、挑戦に胸を貸す。そのために、おひとりで抱え込まず、お気軽にご相談ください。
このページは、宇佐美政英「児童精神科医が伝えたい子どものメンタルヘルス」(月刊薬事、2020年)の内容をもとに、保護者・一般の方向けにまとめ直したものです。診断や治療は、お子さん一人ひとりの状態に合わせて、医師が個別に判断します。